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Convection-enhanced delivery (CED)による悪性脳腫瘍の治療

2018/04/01

臨床試験・治験のご案内

Convection-enhanced delivery (CED)は、薬剤を持続陽圧下に脳細胞間隙に局所注入し高濃度かつ広範囲の薬剤分布を得る新規薬剤投与法です(図1)。血液中に投与された薬剤は血液脳関門というバリアの存在により、脳内への移行が制限され、これが脳腫瘍の薬剤耐性に関わると考えられています。CEDは血液脳関門をバイパスするため効率的な脳実質内薬物送達を可能とする画期的技術です。

私たちは悪性脳腫瘍治療に対するCED治療の基礎研究を2005年より開始し、齧歯・霊長動物を用いた前臨床試験を経て(Sugiyama S et al. J Neurooncol 2007; Sugiyama S et al. Neurol Res 2008; Kikuchi T et al. J Neurosurg 2008; Inoue T et al. Neuro Oncol 2009)、抗腫瘍薬ACNUの脳内分布をMRI画像モニタリング下にCED投与する新規治療法の開発に世界で初めて成功致しました(図2)

東北大学倫理委員会の承認を得て2008年再発神経膠腫の臨床応用に至り、18症例に対して20回の投与を行い、安全性、有効性を確認致しました。更に現行治療では未だ予後不良な脳幹部神経膠腫の治療に成功し(図3; Saito R et al. J Neurosurg Pediatr 2011)、2011年より新たに東北大学倫理委員会の承認を得て脳幹部神経膠腫の治療研究を開始しております。脳幹部腫瘍に対しては現時点で10症例の投与実績を有します。

中学生の男児症例.悪性神経膠腫の脳幹部再発に対して治療を実施した.急速に腫瘍が増大する中で治療を実施し、腫瘍の消退を確認した.治療前に急速が悪化を認めた複視・失調症状も、治療後に軽快した.

<本投薬治療を用いた現行の臨床研究>
① 脳幹部再発神経膠腫の治療
先に述べました通り、脳幹部の神経膠腫は治療手段が限られ、特にその再発においては有効な治療が存在しません。新規治療法の開発が不可欠な疾患であり、当科治療が期待されております。本研究に関する概要については2013年11月に米国サンフランシスコで実施された世界脳腫瘍学会(World federation of Neuro-Oncology)にて口演発表しております。脳幹神経膠腫症例、悪性神経膠腫の脳幹部再発症例を対象に実施しております。
② 初回再発悪性神経膠腫術後投与
悪性神経膠腫は、腫瘍塊周囲に浸潤性に増殖する性質を有します。手術摘出では基本的に腫瘍塊を切除しますが、必然的にその周囲に浸潤する腫瘍に対しては治療手段が限られます。当科では前述の研究にて腫瘍内投与の安全性が確認されたことから、摘出後の腫瘍浸潤を含む脳組織への投薬を実施しております。
 
登録可能な患者さんを募集しております。お気軽にご紹介、ご相談頂ければ幸いです。

<患者さんへ>
専門的診療ですので、必ず主治医の先生を通してご相談ご紹介いただきますよう、お願い申し上げます。
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連絡先:齋藤竜太
東北大学医学部脳神経外科
仙台市青葉区星陵町1-1
〒980-8574
電話:022-717-7230
FAX: 022-717-7233
E-mail: ryuta[at]nsg.med.tohoku.ac.jp
 

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