医療関係の方へ
脳腫瘍
2013/11/08
臨床活動
神経膠腫(グリオーマ)
神経膠腫は原発性脳腫瘍の約30%を占め、腫瘍を構成する細胞の形態から、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫などに分類されます。また神経膠腫は、その悪性度により大きく4段階に分けられます。もっとも良性なグレード1は小児に多いとされる毛様細胞性星細胞腫で、手術で全摘出できれば治癒することが可能です。グレード2以上の神経膠腫は脳にしみこむように広がるため、手術だけでの治癒は困難であり、放射線治療や抗ガン剤(化学療法)を組み合わせた治療(集学的治療)が必要となります。なかでもグレード4の神経膠腫である膠芽腫は手術だけでは早期に再発することが知られており、手術後すみやかに放射線治療と化学療法を行います。
①手術
神経膠腫は正常の脳にしみ込むように広がるために、できた場所によっては無理な摘出は重大な合併症(麻痺(手足の動きの障害)、失語(言葉を話したり理解することの障害))を来たすことになりかねません。当科では安全な摘出を行い、かつ摘出率を向上させるために、覚醒下手術、術中ナビゲーション、脳機能マッピング、蛍光診断によるナビゲーションなどを行っています。
②放射線治療
悪性の神経膠腫に関しては放射線治療科との綿密な協力のもと放射線治療を実施しています。病変に応じて強度変調放射線治療(IMRT)をおこなっています。また切除不能な再発病変に対しては関連病院との協力でガンマナイフ治療やサイバーナイフ治療を行なっています。
③化学療法
初発悪性神経膠腫に関しては、症例によりますが2013年に保険適応となったギリアデルの留置を手術時に積極的におこなっています。これは腫瘍細胞がわずかに残存している摘出腔周囲に抗ガン剤をしみ込ませたポリマーを留置することで残存腫瘍の増殖を防ごうという試みです。また手術後は、放射線治療と併用でテモダールの内服あるいは二ドランの注射を行っています。これは放射線治療が終了後も引きづづき外来に通院しながらで1~2年継続します。再発時には2013年保険適応となったアバスチンを使用しています。これにより再発腫瘍の増大をくいとめるだけではなく、症状の改善を認める患者さんも認められるようになりました。
④CED
中枢神経系に対する薬剤治療は血液脳関門の存在のために困難であることが知られております。脳腫瘍に対する化学療法も同様であり、全身に投与された薬剤のごく一部が脳腫瘍に達するのみであり、十分な効果を得ることが難しくなります。一方で、先述のように神経膠腫は正常の脳にしみ込むように広がります。そのため、手術による治癒切除は不可能とされております。そのため、術後に残存するしみ込んだ腫瘍、もしくは摘出不可能な部位に発生した腫瘍に対しては化学療法の効力を増進することが望まれます。Convection-enhanced delivery(CED)は中枢神経系内の任意の部位に広く薬剤を局所投与する新規投薬技術です。当科では、本治療法を用いた新規治療法の開発を進めております。
CED治験情報はこちら
転移性脳腫瘍
東北大学病院では多数の科で“がん”の治療が実施されております。これら多数の癌種からの脳転移も当科で担当する疾患です。当科による手術摘出、放射線治療科による放射線治療、関連病院との連携によるガンマナイフ、サイバーナイフ治療の選択肢を適切に使用することで、可能な限り転移性腫瘍による状態の悪化を回避する治療を行っております。
小児脳腫瘍
小児の脳腫瘍は、小児がんにおいて白血病についで頻度の高い疾患です。腫瘍の種類やできる場所がさまざまなため、症状や治療法、予後が異なります。
①髄芽腫
もっとも悪性度の高い腫瘍の一つですが、近年は手術、放射線治療、化学療法を適切に行うことにより、かなりの患者さんが長期生存を見込めるようになってきています。通常は手術により可及的に腫瘍を摘出したのち、放射線化学療法を行います。さらに数カ月後に維持の化学療法を行います。3歳未満の乳幼児の場合、発達障害を予防する観点から放射線治療の開始をなるべく遅らせるために、最初は化学療法単独の治療を行います。
②毛様細胞性星細胞腫
良性な腫瘍であり手術により全摘出できれば治癒可能とされています。ただし視神経や視床下部にできた場合は摘出により重大な合併症を来たす可能性もあるために、この場合は化学療法や放射線治療を組み合わせた治療を行います。
③上衣腫
脳脊髄液の流出路である脳室から発生する腫瘍です。良性型の場合、摘出できれば予後は良好ですが、脳幹とよばれる大切な組織に癒着している場合は無理な摘出は行わず、必要に応じて放射線治療を併用します。悪性型の場合は残存部からの再発あるいは脳脊髄液を介して播種性に転移することが知られており放射線治療は必須となります。
④胚細胞腫瘍
松果体、トルコ鞍上部に発生する腫瘍で、胚腫、成熟奇形腫、未熟奇形腫、悪性転化を伴う奇形腫、絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、それらの混合型があります。予後が最も良いのは胚腫、成熟奇形腫であり、胚腫は適切な化学療法と放射線治療をおこなうことにより、成熟奇形腫は手術で全摘出することにより治癒が期待できます。予後中間群は未熟奇形腫、それを含んだ混合型ですが、再発率が予後良好型より高いことからより強い放射線治療と化学療法を行い残存する摘出するといった治療を行っています。最後の絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、それらを主体とした混合型は予後不良群に分類されます。この群の腫瘍は最初に放射線化学療法を先行させ腫瘍の縮小をはかり腫瘍が小さくなったところで全摘出を試みるこという治療を行っています。この群は再燃率が非常に高いために初期治療終了後 さらに維持の化学療法も行っています。
神経膠腫は原発性脳腫瘍の約30%を占め、腫瘍を構成する細胞の形態から、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫などに分類されます。また神経膠腫は、その悪性度により大きく4段階に分けられます。もっとも良性なグレード1は小児に多いとされる毛様細胞性星細胞腫で、手術で全摘出できれば治癒することが可能です。グレード2以上の神経膠腫は脳にしみこむように広がるため、手術だけでの治癒は困難であり、放射線治療や抗ガン剤(化学療法)を組み合わせた治療(集学的治療)が必要となります。なかでもグレード4の神経膠腫である膠芽腫は手術だけでは早期に再発することが知られており、手術後すみやかに放射線治療と化学療法を行います。
①手術
神経膠腫は正常の脳にしみ込むように広がるために、できた場所によっては無理な摘出は重大な合併症(麻痺(手足の動きの障害)、失語(言葉を話したり理解することの障害))を来たすことになりかねません。当科では安全な摘出を行い、かつ摘出率を向上させるために、覚醒下手術、術中ナビゲーション、脳機能マッピング、蛍光診断によるナビゲーションなどを行っています。
②放射線治療
悪性の神経膠腫に関しては放射線治療科との綿密な協力のもと放射線治療を実施しています。病変に応じて強度変調放射線治療(IMRT)をおこなっています。また切除不能な再発病変に対しては関連病院との協力でガンマナイフ治療やサイバーナイフ治療を行なっています。
③化学療法
初発悪性神経膠腫に関しては、症例によりますが2013年に保険適応となったギリアデルの留置を手術時に積極的におこなっています。これは腫瘍細胞がわずかに残存している摘出腔周囲に抗ガン剤をしみ込ませたポリマーを留置することで残存腫瘍の増殖を防ごうという試みです。また手術後は、放射線治療と併用でテモダールの内服あるいは二ドランの注射を行っています。これは放射線治療が終了後も引きづづき外来に通院しながらで1~2年継続します。再発時には2013年保険適応となったアバスチンを使用しています。これにより再発腫瘍の増大をくいとめるだけではなく、症状の改善を認める患者さんも認められるようになりました。
④CED
中枢神経系に対する薬剤治療は血液脳関門の存在のために困難であることが知られております。脳腫瘍に対する化学療法も同様であり、全身に投与された薬剤のごく一部が脳腫瘍に達するのみであり、十分な効果を得ることが難しくなります。一方で、先述のように神経膠腫は正常の脳にしみ込むように広がります。そのため、手術による治癒切除は不可能とされております。そのため、術後に残存するしみ込んだ腫瘍、もしくは摘出不可能な部位に発生した腫瘍に対しては化学療法の効力を増進することが望まれます。Convection-enhanced delivery(CED)は中枢神経系内の任意の部位に広く薬剤を局所投与する新規投薬技術です。当科では、本治療法を用いた新規治療法の開発を進めております。
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転移性脳腫瘍
東北大学病院では多数の科で“がん”の治療が実施されております。これら多数の癌種からの脳転移も当科で担当する疾患です。当科による手術摘出、放射線治療科による放射線治療、関連病院との連携によるガンマナイフ、サイバーナイフ治療の選択肢を適切に使用することで、可能な限り転移性腫瘍による状態の悪化を回避する治療を行っております。
小児脳腫瘍
小児の脳腫瘍は、小児がんにおいて白血病についで頻度の高い疾患です。腫瘍の種類やできる場所がさまざまなため、症状や治療法、予後が異なります。
①髄芽腫
もっとも悪性度の高い腫瘍の一つですが、近年は手術、放射線治療、化学療法を適切に行うことにより、かなりの患者さんが長期生存を見込めるようになってきています。通常は手術により可及的に腫瘍を摘出したのち、放射線化学療法を行います。さらに数カ月後に維持の化学療法を行います。3歳未満の乳幼児の場合、発達障害を予防する観点から放射線治療の開始をなるべく遅らせるために、最初は化学療法単独の治療を行います。
②毛様細胞性星細胞腫
良性な腫瘍であり手術により全摘出できれば治癒可能とされています。ただし視神経や視床下部にできた場合は摘出により重大な合併症を来たす可能性もあるために、この場合は化学療法や放射線治療を組み合わせた治療を行います。
③上衣腫
脳脊髄液の流出路である脳室から発生する腫瘍です。良性型の場合、摘出できれば予後は良好ですが、脳幹とよばれる大切な組織に癒着している場合は無理な摘出は行わず、必要に応じて放射線治療を併用します。悪性型の場合は残存部からの再発あるいは脳脊髄液を介して播種性に転移することが知られており放射線治療は必須となります。
④胚細胞腫瘍
松果体、トルコ鞍上部に発生する腫瘍で、胚腫、成熟奇形腫、未熟奇形腫、悪性転化を伴う奇形腫、絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、それらの混合型があります。予後が最も良いのは胚腫、成熟奇形腫であり、胚腫は適切な化学療法と放射線治療をおこなうことにより、成熟奇形腫は手術で全摘出することにより治癒が期待できます。予後中間群は未熟奇形腫、それを含んだ混合型ですが、再発率が予後良好型より高いことからより強い放射線治療と化学療法を行い残存する摘出するといった治療を行っています。最後の絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、それらを主体とした混合型は予後不良群に分類されます。この群の腫瘍は最初に放射線化学療法を先行させ腫瘍の縮小をはかり腫瘍が小さくなったところで全摘出を試みるこという治療を行っています。この群は再燃率が非常に高いために初期治療終了後 さらに維持の化学療法も行っています。