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脳腫瘍

2013/10/25

研究活動

<脳腫瘍の新規治療法開発に向けた研究>

1)局所投薬技術によるアプローチ
中枢神経系への薬剤送達は多くの場合、血液—脳関門(Blood-brain barrier; BBB)といういわゆるバリアの存在により障害されます。血液中に投与された薬剤はこのBBBの存在により脳組織内への移行が妨げられ、脳内治療標的部位へ到達することができません。古くよりこの問題を克服する方法として脳内局所投与が試みられてきましたが、局所投薬は薬剤の高濃度での投与が可能となりますが、一般的に脳内への拡散が得られないことが問題となっておりました。Convection-enhanced delivery (CED)は、薬剤を脳内に留置したカテーテルより持続陽圧下に脳細胞間隙に局所注入し高濃度かつ広範囲の薬剤分布を得る新規薬剤投与法です(図1)。血液脳関門をバイパスするため効率的な脳実質内薬物送達を可能とする画期的技術として期待されております。
我々は悪性脳腫瘍治療に対するCED治療の基礎研究を2005年より開始し、齧歯・霊長動物を用いた前臨床試験を経て(Sugiyama S et al. J Neurooncol 2007; Sugiyama S et al. Neurol Res 2008; Kikuchi T et al. J Neurosurg 2008; Inoue T et al. Neuro Oncol 2009)、抗腫瘍薬ACNUの脳内分布をMRI画像モニタリング下にCED投与する新規治療法の開発に成功しました。東北大学倫理委員会の承認を得て2008年再発神経膠腫の臨床応用に至り安全性、有効性の評価を進めております。更に現行治療では未だ予後不良な脳幹部神経膠腫の治療に成功し(図2; Saito R et al. J Neurosurg Pediatr 2011)、2011年より新たに東北大学倫理委員会の承認を得て脳幹部神経膠腫の治療研究を開始しております。

2)免疫治療によるアプローチ
 悪性脳腫瘍に対する治療は、手術、放射線治療、化学療法がその柱とされております。免疫治療は第4の柱としてその効果が期待され、多くの研究がなされております。当科では本学免疫学教室と共同で、免疫の共刺激因子に注目して有効な免疫治療の確立に向けた研究を進めております。現時点で、マウス脳腫瘍モデルを治癒させることに成功しており、さらに研究を推進しております。
 
(図1)
 
(図2)

 

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