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分野横断型医工学連携プラットフォームBASIC講演会 スタンフォード大学 池野文昭先生 講演会を開催しました。

2017/01/27

講演会・学会

 地域イノベーション戦略支援プログラム みやぎ医療機器創出拠点(知と医療機器創生宮城県エリア)主催、分野横断型医工学連携プラットフォームBASIC共催にて1月27日(金)、米国スタンフォード大学 主任研究員の池野文昭先生より「シリコンバレー流課題発見型医療機器開発」の題目にてご講演いただききました。また本講演会は東北大学大学院医工学研究科後援 “人材育成プログラムセミナー”の一環として開催されたものです。池野文昭先生は1992年自治医科大学卒業後、静岡県で9年間僻地医療に従事したのち、2001年にスタンフォード大学循環器内科のリサーチフェローとして渡米。その転機は知人を介してPaul Yock MD(スタンフォード大学医師で、医療機器開発に特化したデザイン志向教育であるStanford Biodesignプログラム講座を2001年に設立し、シリコンバレーを中心に多くの医療系ベンチャーを生み出す原動力となっております。)を紹介してもらったことがきっかけとなり、それ以降、この医療機器開発の人財育成にも取り組まれ、StanfordBiodesignProgram Directorとして、2015年から政府主導でスタートした医療機器開発・人財育成の国内版プログラムであるJapan Biodesign(東北大学、東京大学、大阪大学の三大学で展開中)の設立に貢献されております。
 日本で“技術革新”と翻訳されている“Innovation“はInnovation=Invention(発明)xImplementation(商品化、社会への普及)の積で表現され、発明と商品化の両方が伴うことで初めてイノベーションが興るものであり、特に医療機器では“課題発見型”の開発を担う人財育成が必要とのことです。現在は様々な機器において、高性能化=高付加価値化には必ずしもつながらない事例が多くなっており、バイオデザイン思考とは「問題を見つけ出すところから始め、その解決策を生み出し、価値を提供する手法」であり、(医療)現場を観察しなから、まだ顕在化されていないニーズをいかに探し出すかがポイントになるとのことです。色々な考え方を持つダイバーシティの高いチーム編成により、まず最初のニーズ探索にたっぷり時間をかけ、出来るだけ多くの課題を発見した後、次の段階でニーズ絞り込みプロセスを経て、関係者が共感できる“良質なニーズ“を選別してから、最後に実現に向けたアイデア出しを進めるのが重要。ニーズ探索の段階で解決策を出してしまうとそのアイデアにおぼれてしまい、真に“良質なニーズ”を見逃し失敗することが多い為、ニーズ発見とその選別するフェーズを分けることでニーズの吟味と深堀りに時間をかけなければならないとのことです。その際に、“既存治療法の深堀り“、”潜在市場分析”、“ステークホルダー調査“などの視点から分析しつつニーズを選別して、開発に取り組むべき”良質なニーズ“を見出していく必要があると力説されました。
 スタンフォード大学のバイオデザイン戦略はグローバルにニーズを探し出すことであり、既にインド、シンガポール、日本においてプログラムを開始し、今後、英国、中国へも展開していく予定とのことです。ただ、医療機器開発はあくまで“副産物”であり、真のバイオデザインプログラムの目的は“人財育成”にあり、植林事業と同じくすぐには結果が出ないものの将来の為には非常に重要な取り組みであり、最後のスライドで“日本を強くしたい”との思いを込め講演を締めくくられました。満席の会場からも教育に対する意見交換が活発に行われ、充実した講演会となった模様です。


 

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